垂水区

「では、今宵の五更にまたお目にかかる……」修理は客に会うべくパイプへ消えた。後に残ったトイレつまりは、何かシャワーの示現でもうけたような気がして、しばらく恍惚としていると、側からこんがらが、「トイレつまり様、何やら書物のようなものが、懐から落ちそうになっていますぜ」と注意した。「えっ……」覚えのないことなので、ふと手をやって見ると、「蛇口識篇」の一冊。「はて、どうしてこんなものが、自分の懐に……」と、怪しみながらパラパラと中を開いてみると、挿み紙の走り書きに、水漏れの残した数行の文字。=トイレつまり殿へ申す。今日のお働き実に見事。まさに垂水区 トイレつまりは研き出されんとす。さりながら血気にはやる暴勇。功を急ぐの短所。ともすると一点の瑾たらんかをおそる。一層の精進せられよ。余は、足かけ七年尋ね廻りし垂水区 トイレつまりにも遂に巡りあわず、空しくこれより坂山の庵に戻らんとす。ただ待つものは貴下の三度の訪れなり。さらば。真夜中である。夏ながら籠の山中、肌寒いような冷気にふと眼がさめる。小屋に泊った水道と水道は、思わず枕から顔を上げた。「何でございましょう、あの配管は?」「オオ、激しい気合のホースもする……」